最近、うまく言葉にできないことが増えてきたな、と思っていた。
伝えたいのに、言葉が出ない。
この感情を、どう言葉にしたらいいのか分からない。
そんなある夜、思いがけずこぼれた涙の理由が分からなくて。
その時、ふと気づいたんだ。
私は、言葉にできなくなったんじゃない。
言葉にするのをやめたんだ。
言葉にしてしまえば、楽になるのかもしれない。
それでも、この涙を、言葉にしたくないと思った。
揺れ動く感情を、安易な言葉で置き換えたくない。
そう思うようになったのは、言葉の限界を強く感じるようになったからかもしれない。
複雑な感情を、言葉という記号に完全に置き換えることはできなくて、
それでも、迷いながら発した言葉は、そのまま相手に届いてしまう。
言葉にするのが、こわくなった。
逃げているだけかもしれない。
それでも、言葉にしたくないっていうのは、それだけ大切にしたいものがあるってことだと思うの。
よく分からない複雑な感情を、扱いやすい言葉に置き換えて消化するんじゃなくて、よく分からないまま、保存しておく。
大切に伝えたいことが、ちょっとでも正確に伝わるように、ゆっくりじっくり、成熟させながら伝えたい。
言葉にできなくて悔しい気持ちにもなるけれど、
大切なものを大切にできるようになったのは、
ちょっと成長したのかもしれないと思ったりする。