書けなくなった。
昔、真っ暗闇のどん底にいる時は、心の奥底から、湧き上がるように言葉が、文章が出てきた。
書き始めたら、とめどなく流れる濁流のように、言葉が溢れてきたんだ。
私の言葉には、悲鳴に似た魂がのっていた。これが、他の誰でもない私からしか出てこない言葉なんだって、胸を張って言えた。
時間が経って、私は変わった。
たくさんのあたたかい人たちに出会い、ぬくもりを知った。
前よりちょっと自分を認め、楽に生きられるようになった。
そして私は、書けなくなった。
何も湧き出てこない。
魂がのっていない薄っぺらい言葉の羅列に、吐き気がする。
私の言葉じゃない。
どこかで聞いたような、言葉の羅列。
私の言葉は?私はどこ?
何も見えない真っ暗闇にうっすら光が差し込み、ぼんやり世界が見えるようになるにつれて、自分というものが見えなくなっている。
私は、闇の中にしか存在できないんだろうか?
ぬくもりの中にいたら、消えてしまうんだろうか?
闇の中でしか、私は私の言葉を紡ぎ出すことができないんだろうか。
今の私には、人の心に響く文章は書けない。
もう一度、私の言葉を取り戻したい。
私を、取り戻したい。